予言を占い師に求める人々が囚われる未来という魔力

アーレントは「歴史の概念について」の筆写稿のひとつを生前のベンヤミンから託されていて、ベンヤミンの死ののちに、ニューヨークへ向かう船の出航を待つあいだ、リスボンの港でまわりの難民たちにそれを読み聞かせていたといいます。…この一節をたずさえて海を渡ってゆくアーレントの姿も、二〇世紀の思想史を考えるうえで、私たちが逸することのできないものです。(細見和之フランクフルト学派』、89頁)