<物>が対象化されるということ

①共同作業のための合図としての音声言語

 共同・協同・協働

②シンボルとしての言葉

 言葉を獲得したとき「与えられた刺激や刺激群に直接反応するだけでなく、その刺激群を<物>として対象化できるようになる。」

 

 言葉がコミュニケーションの手段として使用される日常生活の場面では、「シンボルとして形成されたはずの言葉が、ただ交換されるだけの記号に堕してしまう。われわれにはじめて<物>を経験させ、<世界>を開いてくれた言葉の原初的機能、つまり「まことのことば」が失われるのだ。」(『道の手帳 木田元』,p.117)

  <物>が見渡せるメタの視点、それが対象として<世界>に表れるように見える地平・位置に立つことが出来るということ、そして<物>をそれが見えたように語るということ。

<物>は言葉によって(durch)語られるのか、言葉において(in)語られるのか。どちらにしても<物質的なもの>ではないのか、道具的でないとすれば<媒質>であり、言葉は道具ですらない。どうにも出来ない<物質的なもの>である。

 

 小林秀雄の一生は、ある意味で、言葉とのたたかいであった。言葉が、われわれにはどうにもできない<物質的なもの>だと気づくことで、彼は一生を閉じたといえるかもしれない。(中村 昇「幻の『小林秀雄ハイデガー』」河出書房新社『道の手帳 木田元』,2014年,p.89)