<他者>とは

私たちがあれこれの対象を欲したり望んだりするにあたっては、欲望する私たち自身の存在が、何者かによって欲望されていなければならない。

 つまり欲望するために、欲望してもらう、すなわち欲望は社会的に「転移」さ
 れることが必要なのである。  私→他者へ欲望が転移

①転移現象の根源には、そもそも「人間の欲望は大文字の他者の欲望である」という
 現実が横たわっている。
②元来私たちの欲望は、他者の欲望が私たちに転移することによって、可能となった。

 たとえば私たちの直接目にしたことのない大文字の他者が、私たちの起源に
 おいて、私たちに「生きていろ」と言った。そのことを受けて、私たちが私
 たち自身を「生きている」と思う。

③そういうことが根本的な欲望の「転移」ということなのである。

       (新宮一成立木康介編『フロイトラカン』,p119参照)

私が欲望するとは、私のいま持っていないものを将来という時間のなかで他者から与えられる可能性として、或いは自らの能動性の結果として保持したいという態度のことである。
一方他者が私を欲望するとは他者が、自らの能動性として私に対面していないことがないということに過ぎない。